Classici giapponesi con furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Leggi 探偵夜話 (たんていやわ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 140.363 caratteri · 277 schermate
「そんな話は聞かないね。向田大尉は非常な勉強家で、暇さえあれば家で書物と首っぴきだそうだ。」
川端でさっき出逢った話をすると、かれは急に笑い出した。
「そりゃきっと人違いだよ。大尉はこのごろ非常に忙がしいんだから、悠々と釣りなんぞしている暇があるものか、夜ふけに家へ帰って寝るのが関の山だよ。第一、あの川で何が釣れるものか。ずっと下の方へ行かなければなんにも引っかからないことは、長くここにいる大尉がよく知っている筈だ。あすこらで釣竿をふり廻しているのは、ほんの子供さ。大人がばかばかしい、あんなところへ行って暢気に餌をおろしていられるものか。」
そう聞くと、どうも人違いでもあるらしい。うす暗い川端で自分は誰かを見あやまったのであろう。かれが挨拶なしに行き過ぎてしまったのも無理はなかった。勤勉の大尉殿がこの際に、見す見す釣れそうもない所で悠々と糸を垂れている筈がない。こう思いながらも、佐山君の胸にはまだ幾分の疑いが残っていて、蘆のあいだから釣竿を持って出て来た人は、どうも向田大尉に相違ないらしく思われてならなかった。しかしどちらにしたところで、それがさしたる大問題でもないので、佐山君もその以上に深く考えて見ようともしなかった。