Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
メレジコウスキイが『トルストイ論』の中からあの露西亜(ロシア)人の面白い話が引いてあった。それは、芽生(めばえ)を摘んだら、親木が余計成長するだろうと思って、芽生を摘み摘みするうちに、親木が枯れて来たという話で、酷(ひど)く私は身にツマされた。ドシドシ新しい家屋の建って行く郊外の光景(ありさま)は私の眼前(めのまえ)に展(ひら)けていた。私は、何の為に、山から妻子を連れて、この新開地へ引移って来たか、と思って見た。つくづく私は、努力の為すなく、事業の空しきを感じた。
眺め入りながら、
「芽生は枯れた、親木も一緒に枯れかかって来た……」
こう私は思うように成った。
その晩、私は急に旅行を思い立った。磯部(いそべ)の三景楼というは、碓氷川(うすいがわ)の水声を聞くことも出来て、信州に居る時分よく遊びに行った温泉宿だ。あそこは山の下だ、あそこまで行けば、山へ帰ったも同じようなものだ、と考えて、そこそこに旅の仕度を始めた。
「なんだか俺は気でも狂(ちが)いそうに成って来た。一寸磯部まで行って来る」
こう家のものに言った。翌朝(よくあさ)早く私は新宿の停車場を発(た)った。