Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
組を造ってよく食いに行った料理屋の食卓の上も忘れられなかった。丁度仏蘭西(フランス)あたりへ長く行って来た人は何かにつけて巴里(パリ)を思出すように、山本さんは又こうして町を歩いていても、先ず南京の二月を思出す。
今度の帰朝で彼を驚かしたのは、東京に居る友人の遠く成って了(しま)ったことだ。最早(もう)死んだ人もある。引越した先の分らなく成って了った人もある。めずらしく旧(むかし)の友達に逢っても、以前のようには話せなかった。
こんな外国人のような、知る人も無い有様で、山本さんは妹を待受けていた。妹の手紙には、寒い方から鼻の療治に出掛けるとしてあった。仙台から一里ばかり手前にある岩沼というところが山本さんの郷里だ。この空には、東北の方の暗さも思いやられた。
旅舎(やどや)の二階へ戻って、山本さんは白い鞄(かばん)を開けて見た。読もうと思って彼地(むこう)から持って来た支那の小説が出て来た。名高い『紅楼夢』だ。嗅(か)ぎ慣れた臭(におい)はその唐本の中にもあった。
一冊取出して、その中に書いてある宝玉という主人公のことなぞを考えながら読んでいるうちに、何時(いつ)の間にか彼の考えは自分の一生に移って行った。