Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
と奥さんは言って聞かせた。
草の芽が見える花畠の間を通って、高瀬は裏木戸から桑畠の小径へ出た。その浅く狭い谷一つ隔てた岡の上が、直ぐ塾の庭だ。樹木の間から白壁だの教室の窓などが見えるところだ。高瀬は谷を廻って、いくらか勾配のある耕地のところで先生と一緒に成った。
「ここへは燕麦を作って見ました。私共の畠は学校の小使が作ってます」
先生はその石の多い耕地を指して見せた。
塾の庭へ出ると、桜の若樹が低い土手の上にも教室の周囲にもあった。ふくらんだ蕾を持った、紅味のある枝へは、手が届く。表門の柵のところはアカシヤが植えてあって、その辺には小使の音吉が腰を曲めながら、庭を掃いていた。一里も二里もあるところから通うという近在の生徒などは草鞋穿でやって来た。
まだ時が早くて、高瀬は先生の室を見る暇があった。教室の上にある二階の角が先生のデスクや洋風の書架の置並べてあるところだ。亜米利加に居た頃の楽しい時代でも思出したように、先生はその書架を背にして自分でも腰掛け、高瀬にも腰掛けさせた。
「好い書斎ですネ」
と高瀬は言って見て、窓の方へ行った。蓼科の山つづきから遠い南佐久の奥の高原地がそこから望まれた。