Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
「噫(ああ)。貧苦ほど痛いものは無いね。貧苦、貧苦、子供は七人もあるし、家内には亡くなられるし――加(おまけ)に子供は与太野郎(愚物)ばかりで……。なあ、君、私もこんなに貧乏していて、それで酒ばかりは止められない。この楽みがあればこそ活きてる。察してくれ給え、酒でも飲まなけりゃいられんじゃないか」
「どうでごわしょう、先生……」
「地方裁判所なんとなると、どうもさすがに違ったものだね。君、『テエブル』が一畳敷もあろうかと思われる位大きくて、その上には青い織物(きれ)が掛けてもあるし、肘突(ひじつき)なんかもあるし、腰掛には空気枕のようなやつが付いてて、所長の留守に一寸乗って見ると――ぷくぷくしていて、工合のいいことと言ったら。君、そうして廷丁が三人も居るんだよ。それで呼鈴(よびりん)と言うので、ちりりんと拈(ひね)ると、そのまあ、ちり、ちり、ちりん、の工合で誰ということが分ると見えて、その人がやって来ますね。大したものですなあ」
すこし話が途切れました。月のさした窓の外に蟋蟀(こおろぎ)の鳴く声が聞える。蛾(が)の大なのが家(うち)の内へ舞込んで来て、暗い洋燈(ランプ)の周囲(まわり)を飛んでおりましたが、やがて炉辺へ落ちて羽をばたばたさせる。