Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
小諸の荒町から赤坂を下りて行きますと、右手に当って宏壮な鼠色の建築物は小学校です。その中の一棟は建増の最中で、高い足場の内には塔の形が見えるのでした。その構外の石垣に添て突当りました処が袋町です。それはだらだら下りの坂になった町で、浅間の方から流れて来る河の支流が浅く町中を通っております。この支流を前に控えて、土塀から柿の枝の垂下っている家が、私共の尋ねて参りました荒井様でした。見付は小諸風の門構でも、内へ入れば新しい格子作で、二階建の閑静な御住居でした。
丁度、旦那様の御留守、母親は奥様にばかり御目に懸ったのです。奥様は未だ御若くって、大な丸髷に結って、桃色の髪飾を掛た御方でした。物腰のしおらしい、背のすらりとした、黒目勝の、粧れば粧るほど見勝りのしそうな御容貌。地の御生でないということは美しい御言葉で知れました。奥様の白い手に見比べると、母親のは骨太な上に日に焼けて、男の手かと思われる位。
「奥様、これは御恥しい品でごわすが、ほんの御印ばかりに」
と母親は手土産を出して、炉辺に置きました。
「あれ、そんな心配をしておくれだと……それじゃ反て御気毒ですねえ」