Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
旦那様は御自分の髪の毛を掻毟って、畳を蹴って御出掛になりました。ぴしゃんと唐紙を御閉めなすった音には、思わず私もひょろひょろとなりましたのです。
私は御部屋へ取って返して、泣き伏した奥様をいろいろと言慰めて見ましたが、御返事もなさいません。すこし遠慮して、勝手へ来て見れば、又たどうも気掛になって、御二人のことばかりが案じられました。
黄昏に、私は水汲をして手桶を提げながら門のところまで参りますと、四十恰好の女が格子前に立っておりました。姿を視れば巡礼です。赤い頭巾を冠せた乳呑児を負いまして、鼠色の脚絆に草鞋穿、それは旅疲のしたあわれな様子。奥様は泣腫した御顔を御出しなすって、きょうの御祝の御余の白米や金銭をこの女に施しておやりなさるところでした。奥様が巡礼を御覧なさる目付には言うに言われぬ愁が籠っておりましたのです。
「私にその歌を、もう一度聞かしておくれ」
と奥様が優しく御尋ねなさると、巡礼は可笑な土地訛で、
「歌でござりますか、ハイそうでござりますか」
寂しそうに笑って、やがて、鈴を振鳴して一節唄いましたのは、こうでした。
ちちははのめぐみもふかきこかはでら