Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
銀行からは毎日のように旦那様の御帰を聞きによこす。長野からも御便が有ました。御客様は外の御連様と別所へ復廻とやらで、旦那様よりも御帰が一日二日遅れるということでした。それは短い御手紙で、鼠色の封袋に入れてありましたが、さすが御寂しいので奥様も繰返し読んで御覧なすって、その御手紙を見ても旦那様の不風流な御気象が解ると仰いました。いよいよ御帰という前の日、奥様は物を御調べなさるやら御隠しなさるやらで、気を御揉みなさいましたのです。
肌身離さず御持なすった写真が有ました。それは男に活写し、判は手札形とやらの光沢消で、生地から思うと少許尤らしく撮れてはいましたが、根が愛嬌のある容貌の人で、写真顔が又た引立って美しく見えるのですから、殿方ならいざ知らず、女に見せては誰も悪むものはあるまいと思う程。頬の肉付は豊麗として、眺め入ったような目元の愛くるしさ、口唇は動いて物を私語くばかり、真に迫った半身の像は田舎写真師の技では有ませんのです。奥様はそれを隠す場処に困って、机の引出へ御入れなさるやら、針箱の糸屑の下へ御納いなさるやら、箪笥の着物の底へ押込んで御覧なさるやら、まだそれでも気になって取出しました。