Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

赤い織色の綬に丸形な銀の章を胸に光らせた人々が続々通る。巡査は剣を鳴して馳廻っておりました。島屋の若旦那、荒町の亀惣様、本町の藤勘様、越後屋の御総領、三浦屋の御次男、いずれも羽織袴の御立派な御様子で御通りになりました。歯医者は割笹の三つ紋で、焦茶色の中折を冠りまして、例の細い優しい手には小豆皮の手袋を着めて参りました。急いで歩いて来たものと見え、暫らく土塀の傍に立って息を吐きましたが、能く見れば目の縁も紅く泣腫れて、色白な顔が殊更いじらしく思われました。姿の美しい男は怒れば怒ったでよし、泣けば泣いたでよく見えるものです。情を含んだ目元は奥様に逢いたさで輝いて、何もその外のことは御存ない様子が、反っていたわしくも有ました。いつ見ても、悪めないのはこの人です。早く人目に懸らぬうちと、私は歯医者を勝手口から忍ばせて、木戸を閉めました。

「お定さん、今日は大層賑だね」

「まあ、人が出ましたじゃ御座ませんか」

「お前さん、どうしたの。なんだか蒼い顔してるね」

「御寒いからです」

「寒けりゃ女は蒼くなるものかね。私は今まで赤くなるとばかり思ってた。いいえ、戯言じゃないよ。