Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate

Aozora Bunko

「おゆき、今のはなんだ」

「新庄のお侍さんらしいかたたちよ、襷がけで汗止をして、袴の股立を取っていました、誰かを追いかけて……」

おゆきはぴたりと黙った。――道をへだてた眼の前の雑木林の斜面から、旅支度をした一人の武士がずるずるとすべり降りて来たのだ。

――あっ!

驚いておゆきが奥へ入ろうとすると、その武士は脱兎のようににげこんで来て、

「お願いです、こ、これを」

と、いきなり持っている物をおゆきの手に押しつけた。

「これをお預かりください、命にかえても守るべきたいせつな品ですが、前後を追手にかこまれて絶体絶命です、決してあやしい物ではありませんからどうかお預かりください」

笠をかぶっているのでよくわからないが、まだ年若な武士である。

衣服は無残に引裂け、肩から土を浴びている。――必死の声音に胸をうたれて、おゆきは思わず、その品を受取った。それは螺鈿ぢらしの立派な文匣であった。

「――かたじけない」

若い武士は笠へ手をかけて、「七生かけて御恩は忘れません。もしまた明朝までに拙者が参らなかったら、湯沢の柏屋と申す宿に、沖田伊兵衛という――あッ」

若い武士は身をひるがえして、