Classici giapponesi con furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate
神奈川追分
一
そのときも、振り顧っていた。そして思わず、あっ……と佇立んでしまった。
神奈川追分
一
白みかけた水明りに、先刻の船はおぼろに見える。桂はまだ其船にいて、船頭とともに、船底の板子を上げていた。
(何をしているのか?)
と思うまに、板子の下から、一人の武士が背を伸ばした。そして、船頭の手から二つの笠を受け取ると、身迅く、ぱっと岸へ跳び上がって、露八の歩いて来た道とは反対な方角へ、走り去ってしまった。
呆っ気にとられたような顔して、露八は、歩くことも、お菊ちゃんに答えることも、忘れているのだった。
「誰だ? ……。今、船底から出て行った侍は」
「そんなこと、いいじゃありませんか」
「隠すのか」
「気を悪くしたの。……じゃあ、もう話してしまう」
男の肌の中で、お菊ちゃんは、男の手をじっと握ったまま、
「ほんとのことを云うと、ゆうべは、斧四郎旦那とお喜代さんをだしに使ったわけ。……だけど、貴方はべつですよ。貴方には、私がほかに用事があるから誘ったんです……。だから、怒らないで下さいね」
「そんなことはいいが、俺には、お菊ちゃんのしていることが、どうも腑に落ちない。俺には仔細を云えないのか」