Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
「なにか仰しゃいまして」
「いや、なにも云わない」
おくみはまた微笑し、なん刻でしょうか、と云いかけて、ふとその眼をみひらいた。
「あらうれしい、やっぱり夢ではなかったんですね」とおくみは云った、「あたし夢のなかで夢だと思ってましたの」
「夢をみていたのか」
おくみはするすると夜具からぬけだし、甲斐のほうへ来て、彼の夜具の中へはいった。甲斐が場所をあけてやろうとすると、その躯にすがりつき、そっと、彼の肩のところへ顔を伏せた。
「ゆうべのこと、みんな夢だったんだって、夢のなかで思っていたんです」とおくみが囁いた、「誰かがそばにいて、夢だ夢だって、あんたは夢をみていたんだって、若いきれいな女の人のようでしたわ、夢をみただけなのに、可哀そうなひとだ、って云うのよ」
「よく眠っていたようだよ」
「起きていらっしゃいましたの」
「寝顔を見ていた」
「あらひどい、悪いかた」
悪いかた、と云いながら、おくみは片手を、甲斐のふところへ、すべりこませた。甲斐はするままにさせた。いつもなら身をよけるか、手を押し返すかする。そんなふうに狎れた接触は好まないのだが、そのときは黙って、おくみのするままになっていた。