Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
四十五
「あの手紙を私に御見せになった時よ」
「そうかしら」
健三は長い手紙の内容を少し思い出した。その中には彼女が幼い健三の世話をした時の辛苦ばかりが並べ立ててあった。乳がないので最初からおじやだけで育てた事だの、下性が悪くって寐小便の始末に困った事だの、凡てそうした顛末を、飽きるほど委しく述べた中に、甲府とかにいる親類の裁判官が、月々彼女に金を送ってくれるので、今では大変仕合だと書いてあった。しかし肝心の彼女の夫が警部であったかどうか、其所になると健三には全く覚がなかった。
「ことによると、もう死んだかも知れないね」
「生きているかも分りませんわ」
二人の間には波多野の事ともつかず、また御常の事ともつかず、こんな問答が取り換わされた。
「あの人が不意に遣って来たように、その女の人も、何時突然訪ねて来ないとも限らないわね」
細君は健三の顔を見た。健三は腕組をしたなり黙っていた。
四十五
健三も細君も御常の書いた手紙の傾向をよく覚えていた。彼女とはさして縁故のない人ですら、親切に毎月いくらかずつの送金をしてくれるのに、小さい時分あれほど世話になって置きながら、今更知らん顔をしていられた義理でもあるまいといった風の筆意が、一頁ごとに見透かされた。