Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
彼は時々金の事を考えた。何故物質的の富を目標として今日まで働いて来なかったのだろうと疑う日もあった。
「己だって、専門にその方ばかり遣りゃ」
彼の心にはこんな己惚もあった。
彼はけち臭い自分の生活状態を馬鹿らしく感じた。自分より貧乏な親類の、自分より切り詰めた暮し向に悩んでいるのを気の毒に思った。極めて低級な慾望で、朝から晩まで齷齪しているような島田をさえ憐れに眺めた。
「みんな金が欲しいのだ。そうして金より外には何にも欲しくないのだ」
こう考えて見ると、自分が今まで何をして来たのか解らなくなった。
彼は元来儲ける事の下手な男であった。儲けられてもその方に使う時間を惜がる男であった。卒業したてに、悉く他の口を断って、ただ一つの学校から四十円貰って、それで満足していた。彼はその四十円の半分を阿爺に取られた。残る二十円で、古い寺の座敷を借りて、芋や油揚ばかり食っていた。しかし彼はその間に遂に何事も仕出かさなかった。
その時分の彼と今の彼とは色々な点において大分変っていた。けれども経済に余裕のないのと、遂に何事も仕出かさないのとは、どこまで行っても変りがなさそうに見えた。