Classici giapponesi con furigana
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みちくさ
道草
Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate
何でも蚊でも訊きたがる彼女も、健三の家庭については、当り障りのない事の外、多く口を開かなかった。健三も自分ら夫婦の間柄を彼女の前で問題にしようなどとはかつて想い到らなかった。
「近頃御住さんはどうだい」
「まあ相変らずです」
会話はこの位で切り上げられる場合が多かった。
間接に細君の病気を知っている姉の質問には、好奇心以外に、親切から来る懸念も大分交っていた。しかしその懸念は健三に取って何の役にも立たなかった。従って彼女の眼に見える健三は、何時も親しみがたい無愛想な変人に過ぎなかった。
淋しい心持で、姉の家を出た健三は、足に任せて北へ北へと歩いて行った。そうしてついぞ見た事もない新開地のような汚ない、町の中へ入った。東京で生れた彼は方角の上において、自分の今踏んでいる場所を能く弁えていた。けれども其所には彼の追憶を誘う何物も残っていなかった。過去の記念が悉く彼の眼から奪われてしまった大地の上を、彼は不思議そうに歩いた。
彼は昔あった青田と、その青田の間を走る真直な径とを思い出した。田の尽る所には三、四軒の藁葺屋根が見えた。菅笠を脱いで床几に腰を掛けながら、心太を食っている男の姿などが眼に浮んだ。