Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Leggi 道草 (みちくさ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.812 caratteri · 293 schermate

Aozora Bunko

八十九

「あの御婆さんの方がまだあの人より好いでしょう」

「どうして」

「五円貰うと黙って帰って行くから」

島田の請求慾の訪問ごとに増長するのに比べると、御常の態度は尋常に違なかった。

八十九

日ならず鼻の下の長い島田の顔がまた健三の座敷に現われた時、彼はすぐ御常の事を聯想した。

彼らだって生れ付いての敵同志でない以上、仲の好い昔もあったに違ない。他から爪に灯を点すようだといわれるのも構わずに、金ばかり溜めた当時は、どんなに楽しかったろう。どんな未来の希望に支配されていただろう。彼らに取って睦ましさの唯一の記念とも見るべきその金がどこかへ飛んで行ってしまった後、彼らは夢のような自分たちの過去を、果してどう眺めているだろう。

健三はもう少しで御常の話を島田にするところであった。しかし過去に無感覚な表情しか有たない島田の顔は、何事も覚えていないように鈍かった。昔の憎悪、古い愛執、そんなものは当時の金と共に彼の心から消え失せてしまったとしか思われなかった。

彼は腰から烟草入を出して、刻み烟草を雁首へ詰めた。吸殻を落すときには、左の掌で烟管を受けて、火鉢の縁を敲かなかった。