Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
窓は屋敷作りなので背が届かぬほど高目にあった。
「お千絵さま」
二度目に呼ぶと、
「誰……?」
すぐ低い答えが洩れてきた。しかもきわめて優しい女の返辞! 万吉はドキンと胸を躍らすと一緒に思わず「ありがてえ」と心の奥で呟いたことである。
「そうおっしゃるのは、お千絵様でございましょうか」
姿は隠して、眼だけを白く上ずらせながら、も一度こう呼んでみると、今度はしばらく何の答えもなかったが、やがてよほど間をおいてから、
「誰……?」
かすかな女の声が前と同じに繰り返された。
「その私は、お目にかかった上でなければ申されませぬが」
万吉はソロソロ身を伸ばして、
「あなたは、甲賀世阿弥様の御息女、あの、お千絵様でございましょうな」
くどいようだが、なお念を押すと、
「エエ」
とはばかるようなうなずきが、万吉の耳へやっと届いてきた。その声を聞くと、一遍に重荷が下りた心地がして、彼は、初めてのびのびと腰を立てて、雨戸の隙が四、五寸ほど障子になっている高窓の口を見上げたが、背が足らないので隙見をすることができない。
だが、まアこれで安心というもの。やはりここがお千絵様の部屋だったものと見える。