Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
どうせ犬の真似をしたついでだ、と思ったのでもなかろうが、そのまま膝で歩き寄って、隅座敷の窓の下へ屈み込む。
そして、ややしばらく、じっと耳を澄ましていたが、時折黄色い銀杏の葉が、廂を打ってハラハラと落ちてくるほか、物音らしい音はない。
はてな、やっぱり誰もいないのかしら? ……と思っていると、家の中でごく密やかに袋戸棚でも開けたような辷り音がした。そして柔らかい絹ずれが窓の近くへ寄ってきた。
窓を開けて、お千絵様が顔でも出してくれるような都合になれば、まことにありがたい偶然だが、なかなかそう願って叶う訳には行かない。
で、万吉。遂に痺れがきれてしまったので、試みに羽目板をコツンコツンと指の尖で叩いてみた。だがやはり、いつまでたっても、中からあけて覗く気配がなかった。
しかしそれにあせって、もし人違いな旅川周馬とでも、面と向ってしまった際には、それこそだいぶこと面倒になるだろう。としばらく我慢してみたが、どうもこっちから当りをつけるより仕方がなくなって、万吉は、いざといえば、半分逃げ支度の気構えを取って、
「お千絵様……」と、聞き取れぬほど低い声をかけてみた。