Classici giapponesi con furigana
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こころ
こころ
Leggi こころ di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.915 caratteri · 322 schermate
慣れない兄は起ってまごまごしていた。私の顔を見ると、「ちょっと手をお貸し」といったまま、自分は席に着いた。私は兄に代って、油紙を父の尻の下に宛てがったりした。
父の様子は少しくつろいで来た。三十分ほど枕元に坐っていた医者は、浣腸の結果を認めた上、また来るといって、帰って行った。帰り際に、もしもの事があったらいつでも呼んでくれるようにわざわざ断っていた。
私は今にも変がありそうな病室を退いてまた先生の手紙を読もうとした。しかし私はすこしも寛くりした気分になれなかった。机の前に坐るや否や、また兄から大きな声で呼ばれそうでならなかった。そうして今度呼ばれれば、それが最後だという畏怖が私の手を顫わした。私は先生の手紙をただ無意味に頁だけ剥繰って行った。私の眼は几帳面に枠の中に篏められた字画を見た。けれどもそれを読む余裕はなかった。拾い読みにする余裕すら覚束なかった。私は一番しまいの頁まで順々に開けて見て、またそれを元の通りに畳んで机の上に置こうとした。その時ふと結末に近い一句が私の眼にはいった。
「この手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもうこの世にはいないでしょう。