Classici giapponesi con furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate
苦が笑いを噛み殺すためであつた。
いつの間にか、あたりはひつそりとしていた。赤々とともつていた店のあかりが、一斉に消え、奥まつた部屋から薄い光が漏れるばかりとなつた。
「取締がうるさいから、あかり消したの。さ、もう、二人つきりよ。もつと酔いたいの、あたし……」
「さあ、さあ、ご遠慮なく……。お相手ならいくらでもするよ。たゞし、持ち合せはこれつきり、いゝようにしてくれ」
ポケットから、四、五千、残りの紙幣を全部、そこへ投げだすと、女は、
「いゝのよ、そんなことしなくつたつて……今日はあたしの特別サーヴィスよ。心ばかりの歓迎つていうとこ……」
もう、その時、京野等志は、自分が今、なんのためにこんな女を相手に酒にひたつているのかわからなくなつていた。酔いしれた結果ではない。それどころか、いつもの量をはるかに越していながら、酔いは次第にさめ、そして、酒は舌に苦いばかりであつた。
老いこんだ母の顔が眼の前にちらつきはじめた。別れた頃の妹たち三人の、それぞれに特徴のある面影が、つぎつぎに、瞼に浮ぶ。腕白盛りだつた弟のイガ栗頭が、これはなぜか影絵のように現われて消える。