Classici giapponesi con furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Leggi 光は影を (ひかりはかげを) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.262 caratteri · 276 schermate
上の妹の多津は、その後、例の話には触れようともせず、彼の方でも、別に穿鑿する気はなかつたが、ある日、下の妹の真喜が、みちみち、すつぱぬいた。
「お姉さん、あのことお兄さんにおつしやいよ。お姉さんが黙つてるなら、あたし、言うわよ」
「なによ、真喜ちやん、よけいなおせつかいだわ。兄さまはもう、ご存じなのよ」
「ほんと、お兄さん、多津姉さん、愛人ができたの、ご存じ?」
「知らないね」
「それごらんなさい。相手は、雲井秋生、ほら、小説家の……」
多津は、それを否認はしなかつた。彼も、なんの反応も示さなかつた。この話題は、それきりに、夏の夜の微風とともに流れて行つた。
そういう夏が、もう過ぎようとしていた。
深志からも、まつたく音沙汰がなかつた。母がときどき、前に荷物を運んだ運送屋に頼んで、下着類などを宿に届けさせているらしかつた。
その日もちようど日曜であつた。多津は、前の日から外出の用意をし、朝食をすますと、帰りはすこし遅くなるかもしれぬといつて、いそいそと出て行つた。真喜は、友達の家を訪ねる約束があるといい、これも、一人で、あたふたと出掛けた。京野等志は、久しぶりで友人の南条を誘い、どこかでいつぱいひつかけようと思いたち、電話をかけておいて、夕方、早めに家を出た。