Classici giapponesi con furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Leggi 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.479 caratteri · 394 schermate
と声が消えた。
もう広太郎動かれない。――グッと横向きに伸びたままだ。太刀はしっかり握っている。ブルブルブルブルふるえる切っ先、大波を打つ背のうねり、その上を火光と月光と、ボ――ッと淡く照らしている。
意識がだんだん失われて行く。銅兵衛の姿が浮かんできた。と、その姿が娘になった。君尾だ君尾だ、笑っている……と、一軒の家が見えた。縁に娘が坐っている。お京様だお京様だお京様だ! やっぱりうれしそうに笑っている。……
「おれは死ぬのだ!」――ハッキリ思った。深い空間へ落ちてゆく。何者かおれを引っ張っている。……それっきり何にも感じなくなった。
木の間をもれて月光と火光、依然広太郎を見おろしている。千切れたもとどり、顔にかかった髪、ああその顔のあおいことは! ゲッソリ痩せて、骨ばって、黒い輪が両眼を隈取っている。切り裂かれた袖や裾、裾からニューッと二本の足、白ねぎのようにはみ出している。赤いくもの巣が色どっている。それがズルズル動いている。血が流れているのである。
静かである。山の中! 誰一人助けには来ないらしい。風もやんだ。木の葉も動かぬ。スクスクと立っている両側の木立! 幹がなま白く光っている。