Classici giapponesi con furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Leggi 夜明けの辻 (よあけのつじ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.801 caratteri · 86 schermate
も姿を見せない。
「……ひとつ、出掛けるかな!」
手拭でごしごし、力任せに肌を擦りながら、伊兵衛は雪に煙る鬼鉾山塊を見やった。
雪に折敷かれた笹の道や、氷柱の結ぶ崖下の穴や、それから吹溜りに蠢動する熊の背などが、心を唆るように眼にうかぶ……熊がどの穴からどの道を通るか、鹿はどっちからどの林へ追込むか、伊兵衛には自分の掌のものを見るように分っている。
「鹿の肉でみんなを呼ぶのも悪くないぞ」
「なにを独言をおっしゃってますの」
いきなり後から呼びかけられて伊兵衛は振返る拍子に釣瓶へ頭をうちつけた。
佐和が縁側で笑った。
「なんだ、急に大きな声を出しゃあがって、びっくりするじゃないか」
「またそんな下品なお口を」
妹は威すように奥へ眼をやった。
「もう母上もおめざめですから」
「おまえが驚かすから悪いんだ。なんでも母上とさえ云えばおれがへこむものときめてる、もうおれだってそんな年齢じゃないぞ」
「……伊兵衛」
向うで母親の呼ぶ声がした。
「そんなところでなにを威張っているのです。早く着物を着てお入りなさい。風邪をひいたら外出は禁じますから」
「はい、ただ今あがるところです」