Classici giapponesi con furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Leggi 夜明けの辻 (よあけのつじ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.801 caratteri · 86 schermate
「功刀どのは拙者の新論を読まれましたか」
「読みません。先夜の講演を聴いたのみです」
「それでもけっこう、あれを聴かれたら改めてお訊ねにも及ぶまいと思うが」
「いやお訊ね申さなくてはならぬ」
伊兵衛は大弐の眼を見返して云った。
「山県どのの説は幕府を誹謗し、名を尊王に托して世人を過つものだと思う。あなたは『得一』の説において禄位二つに別れるは乱世の基なりと云われた」
「お待ちなさい」
大弐は静かに制した。
「ここで新論の末節を論じたところでいたしかたはない。そんな議論は措いて、根本のことを考えてみてはどうです」
「根本のこととは」
「我々はいったい何者なのか、我々の立っているこの国土はどういうものなのか、それをまず検めてみましょう……功刀どの、我々は大和の民です。日本という国土に生れ、一天万乗の天皇を戴いている、この点にあなたの御異存がありますか」
「それは山県どののお言葉どおりです」
「ではなんの議論もないはずです……拙者の選した『柳子新論』は、けっきょくそれを明らかにしただけのことです。人間は愚なもので、余りに分りきったことがらは眼に見ず、耳に聞こうとしません。