Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

よあけのつじ

夜明けの辻

山本 周五郎

Leggi 夜明けの辻 (よあけのつじ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.801 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

火急の場合にもそれだけは移し守ってきた、我家に伝わる古い仏壇を、そのまま眼前に見たとき、伊兵衛は厳粛に身のひきしまるのを覚えた。

燈明をあげ香を点じ、鳴鉦して向直ると、母が古い胴巻に包んだ物を差出した。

「これに金子が百二十両あまりあります」

「それはいけません母上、拙者は」

「いいえなにも云わずに取っておおき」

母は拒むことを許さなかった。

「お父上が御倹約あそばしたので、まだ少しは手許にあります。無くなったらいつでも云っておよこしなさい。母にできる限りは送ってあげます」

「しかし母上や佐和に御苦労をかけては相済みません。拙者はどうにかいたしますから」

「わたしや佐和は女です。賃仕事をしても喰べるくらいのことはできます。五郎次がここに置いてくれるそうだから、けっしてわたしたちのことは心配する必要はありません。持っていらっしゃい」

伊兵衛は黙って平伏し、押戴いて金包を受取った。

別れに臨んでも、もはや云うべきことはなかった。安泰を祈る門出ではない。生きて再会ができるかどうかも分らない。しかし母は健気に泣かなかった。

「では母上、御健固を祈ります」

「……死に場所を誤らぬよう。