Classici giapponesi con furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Leggi 探偵夜話 (たんていやわ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 140.363 caratteri · 277 schermate
深田君はその虫の音を感に堪えたように聞いていたが、やがて一人で庭に降りた。なにか少し面白くないことがあって、いわゆる親戚の娘を座敷に置き去りにして来たのである。
今夜はどこの座敷もひっそりして、明かるい月の下に冷々とながれている隅田川の水を眺めているのは、この家じゅうで深田君一人かと思われるくらいであった。深田君は出来そこないの謡か何かを小声で唸りながら、植え込みの間をぶらぶら歩いているうちに、かれはたちまち女の声におどろかされた。
「あら。」
だしぬけに金切り声を叩き付けられて、深田君はびっくりして立ち停まった。親戚の娘がさき廻りをしていて、いたずらにおどしたのかとも思ったが、そうでないことはすぐに判った。深田君をおどろかした女はやはり二十歳ぐらいで、庇の大きい束髪に結っていたが、そのなまめかしい風俗がどうも堅気の人間とは受け取れなかった。女の方でも深田君の姿がだしぬけにあらわれたので、思わず驚きの声を立てたらしく、急に気が付いたように言葉をあらためて謝まった。
「どうも失礼。まことにすみません。」
「いや、どうしまして。」
言いながらよく見ると、女は色の丸顔の小作りで、まぶしそうに月明かりから顔をそむけた睫毛には白い露が光っていた。