Classici giapponesi con furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Leggi 探偵夜話 (たんていやわ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 140.363 caratteri · 277 schermate
汽車は北の方角へむかって行くのでしたが、途中から陰った空はすっかり剥げてしまって、汽車みちの両側では油蝉の声が熬り付くようにきこえました。強い日光は鎧戸の外まで容赦なく迫って来て、約五時間の汽車旅行にはわたくしもかなり疲れました。気味の悪いあぶら汗が襟もとにねばり付いて、絶えずそれを拭いているハンカチーフが絞るように湿れてしまいました。
「三津子さんの住んでいる山の中はさぞ涼しかろう。」
そんなことを考えて、努めて涼しそうな気分をよび出すようにして、わたくしはどうにかこうにかこの暑苦しい汽車旅行を終って、小さい田舎の停車場に降り立ったのは、午後一時に近い頃でした。停車場の前には百日紅の大きい枝がさながら日除けのように拡がっていましたが、そのたくさんの花が白昼の日にあかあかと照らされているのが、まぶしいほどに暑苦しく見えました。
「村上さん。」
よびかけられて振り向くと、三津子さんはパラソルをつぼめて、その百日紅の木かげに立っていました。三津子さんはわたくしと同い年の廿一で、年よりも若くみえる質の人でしたが、一年あまり逢わないうちにめっきりと老けたようで、眼の美しい下膨れの顔が少し痩せたようにも見えました。