Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

寝ながら、不動の姿勢を取っているような妹の側で、時々お新と落合って、ありふれた言葉を取換(とりかわ)すというだけでも、山本さんには嬉しかった。これで妹が愈(なお)るとする、退院する、三越あたりで買物して、歌舞伎座の一日も見物すれば、いずれお新は帰って行く人である。太陽は今朝出たと同じように、明日の朝も出るだけの話だ。独りぼっちの人間は何処まで行っても独りぼっちだ。これが人生とすれば、山本さんには堪えられなかった。

もっと自分を幸福(しあわせ)にすることは無いか。そこから山本さんは思い立って、お新へ宛てた手紙を書いた。凍った土ばかり眺めていたお新が、熱海(あたみ)か伊東あたりの温暖(あたたか)い土地へ、もし行かれるなら行きたいと言っていることは、お牧への話で山本さんも知っていた。お新は産後と言っても時が経っている。嬰児(あかご)は月不足(つきたらず)で産れる間もなく無くなったとか。旅に堪えないというお新でも無いらしかった。

不取敢(とりあえず)手紙を出した。

この旅には、彼は一切の費用を自分で持つ積りで、お新に心配させまいと思った。温泉などのある方へ、彼女を誘って行く楽しさを想像した。