Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
「水を、も一つ上げましょう」
「沢山、もう頂きました」
「すこし沈静いたら、今夜は早く御帰りなさい。お定もああして心配していますから、ね、そうなさい」
「はい。はい。さあこれから行って復た芸者を揚げるんだ。六区へでも行かずか」
「さあ、そうだ、そうなさい」
「これは不調法を申しやした。御免なすって御くんなさい。酔えばこんなものだが、奥様、酔わねえ時は好い男だ。アハハハハハハ」
と、よろよろしながら立上りました。
「おやすみ、おやすみ」と可笑な調子。
「何だねえ、確乎して御行よ」と私は叱るように言いまして、菎蒻を提げさせて外へ送出す時に、「まあ、ひどい雪だ――気を注けて御行よ」と小声で言いました。
「お、や、す、み」
と歌のように調子をつけながら、千鳥足で出て行く。暫く私は門口に佇立んで後姿を見送っておりますと、やがて生酔の本性を顕して、急にすたすたと雪の中を歩いて行きました。見れば腰付から足元からそれ程酔ってはいないのです。父親は直ぐ闇に隠れて見えなくなって了いました。
ホッと一息吐いて、私は御部屋へ参って見ますと、押入のなかに隠れた人は頭かきかき苦笑をしておりました。