Classici giapponesi con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Leggi 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.813 caratteri · 302 schermate
それは袖口(そでぐち)を括(くく)って、お房の好きなリボンで結んである。お菊のためには黄八丈の着物を択ぶことにした。
「菊(きい)ちゃんの方は色が白いから、何を着ても似合う」
こう皆なが言い合った。
五月の朔日(ついたち)は幸に天気も好く、旅をするものに取って何よりの日和(ひより)だった。子供は近所の娘達に連れられて、先ず停車場を指(さ)して出掛けた。学校の小使が別れに来たから、この人には使用(つか)っていた鍬を置いて行くことにした。私は毎日通い慣れた道を相生町の方へとって、道普請の為に高く土を盛上げた停車場前まで行くと、そこで日頃懇意にした多勢の町の人達だの、学校の同僚だの、生徒だのに出逢った。そこまで追って来て、餞別のしるしと言って、物をくれる菓子屋、豆腐屋のかみさんなどもあった。同僚に親にしてもいいような年配の理学士があったが、この人は花の束にしたのを持って来て、私達の乗った汽車の窓へ入れてくれた。その日は牧野君も洋服姿でやって来て、それとなく見送ってくれた。
「困る。困る」
こう言って、お菊は泣出しそうに成った。この児は始めて汽車に乗ったので、急にそこいらの物が動き出した時は、私へしがみ付いた。