Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

だが、それも嫌なわけではない。斧四郎は、わざと、羽織を裏返しに着て、

「生姜安いか。生姜安いか」

と、ひやかして歩いた。

鳥居下から、拝殿までの両側に、戸板を並べている生姜市の商人たちは、

「負かった負かった」

と、手を拍って、いい鴨を、引っぱり合った。

芸妓たちは、右手にも左手にも、生姜を持たせられた。斧四郎も一把持って、肩にのせたり、振り廻したりした。お菊ちゃんだけは、どうしても持たなかった。

「あたし、生姜はいらないから、太好庵の伽羅油がお土産に欲しい」

「伽羅油でも、白檀油でも、買ってやるから、これを持て」

斧四郎が、押しつけると、

「嫌」

と、逃げてしまう。

露八も、酔っていた。陰間茶屋をのぞいて、袂に綻びを切らしたり、楊弓場の女に、からかわれたり、いい気持らしかった。

斧四郎は、吹矢を買って、

「誰か、これで、あの鬼灯提灯を、射ってみないか。射てた者に、五両やる」

と、また、物遣り癖を出した。

「どの提灯」

「あの神馬小屋の軒にぶらさがっている、め組の赤い提灯さ」

「造作ない」

芸妓たちは、争って、

「ふッ!」

吹いた。

「だめだめ」

お喜代が、色紙の矢を入れて、口を尖らしたが、その顔がおかしいと側の者が笑ったので、矢は、途中で落ちてしまった。