Classici giapponesi con furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate
二十人ばかりで、駈けてきた。
追いまわされて、露八は、銃尻で撲りつけられた。言い訳は、一つも聞かれなかった。
「こいつ、江戸弁じゃ、長藩に、弟がいるなどとは、嘘の皮、撲って、泥を吐かせろ」
どう弁解しても、駄目なのだった。幕兵とちがって、連日、戦に勝っている驕兵だし、肩の錦布が、めずらしくて、誇りがましくて、犬にも威張ってみたいような薩摩兵の群れであった。
「云わんかッ」
「斥候じゃろう、わいは」
「こやつ」
「なぜ、もの吐かさん」
蹴る、撲る。銃の尻で、腰ぼねをどやされたときには、我慢しきれないで、
「痛いっ」
と、跳び上がった。
「痛いか、江戸のやつも、人間なみに、痛いというぞ」
中には、ぺっと彼の顔に、唾をして罵るのもいた。
「わいら、江戸っ子の、関東武士のと、ふだん大口たたきおるくせに、その態、なんじゃ」
「この、生まれ損ない」
「死に損ないめが」
無数の土足が、露八の体を、もう痛いとも痒いとも感じないほど弄んだ。露八の血は、逆さになった徳利のように、頭へのぼってしまった。唇はやぶれ、鼻は傷ついている。鼻腔でだけ呼吸をして、眼がかすんで、相手の数も顔もよく見えないために、わざと大きく瞠っているように眸がひらいてしまった。