Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Leggi 松のや露八 (まつのやろはち) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 125.597 caratteri · 253 schermate

Aozora Bunko

心から惚れているのは、あのお喜代なのに、妻といい、情婦といい、運の悪さを、心で喞った。

「さ、歩けっ」

健吉は、ぐいぐいと拳を押す。亀の子の泳ぐように庄次郎は歩いた。

どこへ、持って行って、斬るつもりか。

橋をわたる。

築地河岸の原っぱが見える。

「駄目だ……」

彼は、観念した。首を斬られることが、さほど、悲しくなくなって、自分の姿が、笑いたくなってきた。

健吉が、自分の首すじへ、刃を当てるときには、

(お喜代さんに、よろしく伝えてくれ)

それだけは、頼んでおこう。

また、ほかの不義理はとにかく、渋沢の借金だけは、事情を話して、父から返してもらうように、これも、遺言へ加えておこう。

そんなことを考えている間に、踏んで行く草が見えだした。どこかで、汐干船の馬鹿囃子が聞こえる。春風は、景気のよい馬鹿囃子のチャンギリの音をつつんで、庄次郎の首すじを吹いた。

原の中ほどまでくると、榊原健吉は、ふいに左腰をひねって、

「それへ、直れっ」

いやというほど、庄次郎の体を、たたきつけて、振り向いた。

「お待たせしたな、約束の男、連れて参った」

べつに一名の侍が、原に待っていたのである。