Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
「ほかにはないか」
「はい、ほかにはなにも」
「証文の件はどうだ、一ノ関と証文を取交わしたようだと云ったが、本当に取交わしたようすか」
「それはまだはっきりわかりません」
「ばか者、なんのためにあの邸へはいったか忘れたのか」
「その後あの話しは出ないのです、もしかすると聞きはぐったかもしれませんけれど」とおみやは兄を見て云った。
「わたくしはまだ新参のほうですし、勤めには順がありますから、いくら殿さまの御贔屓でも、絶えずお側にいるわけにはまいりませんわ」
「そんな云い訳は三文の役にも立たん、おれが眼と耳をはなすなと云ったら、云われたとおりにすればいいんだ」
「これまでは、そうして来たつもりです」
「褒めろとでも云うのか」
「いいえ、もうこれ限りわたくしの役は堪忍して頂きたいのです」
六郎兵衛は黙っていた。
「この話を聞いて頂くためにまいったのです、わたくし、もうこういう役は勤めません、これからはどうぞ、わたくしを当てになさらないで下さい」
六郎兵衛は黙って、疑わしげな眼で、じっと妹をみつめた。こいつ変ったぞ。彼は初めて気がついた。
はいって来たときから、おみやのようすは変っていた。