Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Leggi 狂い凧 (くるいだこ) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 111.430 caratteri · 226 schermate

Aozora Bunko

彼は茶碗を置いて、痛そうに身じろぎをした。

「どうも背中というやつは、始末が悪い。自分でも見えないし、いわば盲点みたいなもんだからな。いつ敵が飛びかかって来るか判らない。人間が仲良くなる時、胸襟を開くとは言うけれど、背中を見せ合うということは、絶対にしないものだ」

私はその矢木の言説に、半分賛成したが、半分反対の気持があった。矢木は茶を飲み干すと、体をよじりながら枕からずり落ち、元の臥床の姿勢に戻った。苦しそうな、あるいは苦しさを誇張したような声で、

「骨が動くんだよ。人間関係みたいに、あちら立てればこちらが立たずという理屈は、骨には通用しない」

「僕もいつか背骨を打って、気を失った人を見たことがある。その現場をだよ」

私はあの日のことを思い出しながら言った。

「事故。事故だな、あれは、全く」

「自動車事故か?」

「うん。やはり自動車事故だろう。自動車が停留所標識をはねた。標識は折れて遠くに飛び、ある女の背中にぶつかった。自動車はそのまま逃げてしまったが、おそらく女に当ったことは知らなかったんだと思う。するとだね、女は確実に被害者だが、運転手の方は加害者と言えるかな。