Classici giapponesi con furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Leggi 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 119.879 caratteri · 242 schermate
天才になりそこなった男の話
東洋大学の学生だったころ、丁度学年試験の最中であったが、校門の前で電車から降りたところを自動車にはねとばされたことがあった。相当に運動神経が発達しているから、二、三間空中に舞いあがり途中一回転のもんどりを打って落下したが、それでも左頭部をコンクリートへ叩きつけた。頭蓋骨に亀裂がはいって爾来二ヶ年水薬を飲みつづけたが、当座は廃人になるんじゃないかと悩みつづけて憂鬱であった。
こんな話をきくと大概の人が御愁傷様でというような似たりよったりの顔付をするものだが、ところがここにたった一人、私がこの話をしかけると豆鉄砲をくらった鳩のように唖然として(これは喋っている私の方も唖然とした)つづいて羨望のあまり長大息を洩らした男があった。菱山修三という詩人である。
この詩人が外国語学校を卒業したとき、朝日新聞へ入社試験を受けにいった。ところがこの男学生時代というもの完全に新聞を読んだことがない。書斎と学校の他には何一つ知らないのである。丁度その年は満洲事変の勃発したばかりの頃で、街頭いたるところに襷掛けの中年婦人が千人針というものを勧誘している。四方八方が肉弾三勇士のレコードでまことに物状騒然たる有様である。