Classici giapponesi con furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Leggi 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) di Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 119.879 caratteri · 242 schermate
母
畏友辰夫は稀に見る秀才だったが、発狂してとある精神病院へ入院した。辰夫は周期的に発狂する遺伝があって、私が十六の年彼とはじめて知った頃も少し変な時期だった。これ迄は自宅で療養していたが、この時は父が死亡して落魄の折だから三等患者として入院し、更に又公費患者に移されていた。家族達は辰夫の生涯を檻の中に封じる所存か、全く見舞にも来なくなった。
辰夫は檻の中で全快したが、公費患者の退院には保護者の保証が必要であるし、それに辰夫は三等患者時代の費用が百円程借りになっていたので、退院することが出来なかった。辰夫は狂人達と一緒に檻の中で封筒を貼っていたが、一日七銭の稼ぎになると言っていた。
そういうわけで他に訪れる人がなかったので、辰夫は私一人を心待ちにして暮した。ところが私は性来最も頼りにならない男で、自分の親切さには凡そ自信を持たないから、人に信頼されたりすると重苦しくて迷惑するのであった。併し辰夫は毎日の面会が終る度に必ず目に泪を泛べて、「又明日もきっと来て呉れ給えね、君一人を待暮しているのだから」と言い乍ら痩せ衰えた指を顫わせ私の手首をきつく握るものだから、私も余儀なく毎日のように病院へ足を向けた。