Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Leggi 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.271 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

重太郎さん……。」

声は吹雪に隔てられて聞えないので、重太郎の小さい姿は十間ばかりの先に見えつ隠れつしながらも、お葉は容易に追い止めることが能なかった。加之も風の吹き廻しで、声は却って後の方へ響くので、巡査は彼女が重太郎を呼ぶ声を聞いた。忠一の耳にもお葉の声が聞えた。重太郎の名を聞いては愈よ捨置かれぬ、巡査も人々も続いて其跡を追った。が、何分にも眼口を撲つ雪が烈しいので、人々は火事場の烟に噎せたように、殆ど東西の方角が付かなくなって来た。

この中でも、お葉は例の本性を発揮して、飽までも強情に吹雪を衝いて進んだ。駅を出ると風も雪も愈よ強くなって来た。山国の冬に馴れたる彼女は、泳ぐように雪を掻いて歩んだ。が、心は矢竹にっても彼女は矢はり女である。村境まで来る中に、遂に重太郎の姿を見失ったのみか、我も大浪のような雪風に吹き遣られて、唯ある茅葺屋根の軒下に蹉き倒れた。雪は彼女の上に容赦なく降積んで、さながら越路の昔話に聞く雪女郎のような体になった。

この茅葺は隣に遠い一軒家であった。加之も空屋と見えて、内は真の闇、鎮り返って物の音も聞えなかった。

(六十一)