Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
と万吉は礼をいって、また虱しぼりの手拭を頭にのせ、鉄砲笊を背中へ廻して往来へ出た。
やがてその姿は、出た所から遠くない墨屋敷の堤囲いへ入り、甲賀家の古い黒塀に沿って、ピタ、ピタと藁草履の音をすりながら、
「屑ウーイ。屑ウーイ」
張りしまっている心とは反対に、わざと間の抜けた濁み声を流していった。
と――万吉は立ち止まって、ズウと後ろを見廻した。あっちこっちに黒い屋敷の塀や樹木が見えるのみで、この囲い内は人通りのない所だ。
万吉が立ち止まった所は、いつか初めてここを訪れた時、細目にあいている小窓を見たあの辺である。そこへ立つと目明し万吉、耳朶をつねってちょっと何か考えこむ。
そして塀の節穴へ目を当てた。覗いてみると屋敷の中、相変らず森閑とはしているが、今日もあの窓の戸が四、五寸ほど開いている。
「ははあ、やッぱりここだな。ここより外に人臭い様子がねえ。いつか草の中に、髪の毛のついた手拭紙が捨ててあったのもこの辺だ。ほかに女気もないという話、きっと座敷牢とでもいう按配になっているのかも知れねえ、一つ当ってみようか……」
何の造作もなく、万吉は塀の朽ちた穴を探して犬のように這い込んだ。