후리가나로 읽는 일본 고전
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
吉川 英治의 剣難女難(けんなんじょなん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 243,807자 · 482화면
とお延は口のうちで呟やいた。そして側に黙然としている、新九郎の膝へ手を乗せて、
「お前さん、くたびれたのかえ」
とこの暗澹な山中で見てもなお飽くまで艶な顔を覗かせた。
「いや……」
と新九郎は冠りを振ったきり、お延の媚に顔を反向けた。彼はただ山荘を遁れる手段に、お延に手をとられてここまで来たが、これから先、この妖婦の手から逃げることは、鉄壁の山荘を越えるより難かしい気がした。
「えお前さん、どうしたのさ、怪我でもしたんじゃないのかえ?」
女は、真に憚りのない闇の場所では、思い切って大胆な真似をするものだと――新九郎は身を捻らせた。
「そうじゃ、怪我をしたのだから触ってくれるな」
と彼は女の言葉を幸いに嘘を云った。
「どこを? どこをさ……」
「岩角で足をしたたかに打ちつけたのじゃ」
「まあ危ない――でも、もうじき夜が明けそうだから、そしたら里へ下りてゆっくり手当をさせますよ。ねえ、それまで辛抱できるでしょう……」
とお延は新九郎が痛いと云った足のところを擦り始めた。
そうだ、早く夜が明ければいい! 新九郎も心のうちでそう願った。夜が明けたら里へ下りてお延にきっぱり自分を諦めるように話そう――新九郎には、まだ淫婦の中年の恋が、どんなに執拗で強いものか、それを充分噛み分ける経験はなかった。