후리가나로 읽는 일본 고전
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
亀井 勝一郎의 大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 108,647자 · 215화면
津軽海峡を渡って函館へ上陸したことのある人は知っていると思うが、連絡船が港に近づくと、下北半島に相対した恵山方面の丘に、トラピスト女子修道院の白堊の塔がみえるであろう。湾内に入りかけると、津軽半島に相対した松前方面へつらなる丘の上に、トラピスト男子修道院の赤煉瓦の建物がみえる。この二つの修道院をつなぐ線が、幼少年時代の私の散歩区域であった。
とくに女子修道院のある上湯の川の丘は、一面の鈴蘭畑で、六月のはじめ、あの可憐な花がひらきはじめると、よく友人とその草原へ出かけて行って、鈴蘭の畑の中に仰むけにねそべりながら、雲雀のさえずりをきいたものだった。この丘からは津軽海峡の暗緑色の流れや、浜辺にくだける白い波が望見されるが、その波うちぎわから丘の間は、なだらかな草原となっていて、牛が放牧されてあった。いまもなお記憶に残るのは、鈴蘭の花の香りと、空高くひびく雲雀の声である。五月から六月へかけてであって、云わばこの頃が私の故郷における最も春らしい季節なのである。故郷を離れてから十数年になるので、その頃の詳しい記憶はかなり消え去ってしまったが、この丘に漂う早春のむせるような香りだけは、春くるたびに身近に感ぜられる。