후리가나로 읽는 일본 고전
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
亀井 勝一郎의 大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 108,647자 · 215화면
この地方では蚕を飼うので桑の木が多い。北海道では桑畑は全くみられない。山形で一番さきに春の訪れるのを感じるのは、この桑の若芽の萌え出ずる頃である。丈の低い、ふしくれだった頑丈なその幹と枝ぶりはゴッホの筆触を思わせた。そこから実に可憐な小さな若葉が出て来る。雪が消えて、道路のぬれたところを歩きながら、ふとこの桑畑に眼をやると、ああ春が来たのだと心から感じるのであった。また、これは晩春であるが、桜桃畑の眺めも忘れ難い。その花はさして美しくはないが、桜桃の実の熟するときは、すべての木々に小さな提灯をつるしたようで、一面に周囲が朱い点々となり、眼と食慾とを同時に誘惑したものである。平生の散歩道であるし、桜桃の枝は肩のあたりまで垂れているので、つい手が出る、というより口が出る。つまり唇の辺に、桜桃の朱い実がたわわにぶらさがっているのだ。春がくるたびに、私はいつも頬にふれたその柔い感触を思い出す。
山形には三年住んで、それから東京へ移ったまま現在に及んでいるが、市内での春の思い出というものは殆どない。むしろ季節に無関心で過したと云っていいほどだ。いまの武蔵野に住むようになってから、この平原の林に訪れる春の微光を、漸く蘇生の思いで眺めるようになった。