후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
僕は夢のなかで、とうとう紅い月の夢をみたなと思った。それではいよいよ父も死ぬるのかしら、そう考えた瞬間、父の病床がぱっと眼さきに見えて来た。さきほどあんなに喘ぎ喘ぎしていた父は今、夜具を跳ねのけると、するすると、畳の方へ匐い出して来る。はっとして僕は呻こうとした。そのとき僕は従姉にゆすぶり起されていた。「お父さんが……」彼女は急いで僕に着物着替えさせた。僕が父の病室に入った時、あたりは泣声に満ちていた。
とうとう父はほんとに死んだのだった。僕はしかし何か半信半疑の気持がしてならなかった。死んだ父の額にはあの不吉な翳が刻まれていたし、身を縮めて棺に納まってゆくときの父はやはり喘いでいるのではないかとおもわれた。だが、家には大勢の人が集まっていたし、埋葬はもの珍しく賑やかだったので、僕はやはりどうやら、その方に気をとられている子供だったのだ。
だが、それから一年位すると、僕はいつの間にか、あの飛んだり跳ねたりしたがる子供の衝動をすっかり喪っていた。父の臨終の時の空気がその頃になって、ぞくぞくと僕のなかに流れ込んで来た。僕の家の庭の隅にある大きな楓の樹が無性に懐しくおもえだしたのもその頃だ。