후리가나로 읽는 일본 고전
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
小出 楢重의 小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 334,351자 · 657화면
さような人物になると座席など決して贅沢はいわない。いつも鯛でいえばお頭の尖端か、尻尾の後端へ噛じりついて眺めている。
即ち近くで泣く子供を叱り付けながら、足の痺れを我まんしながら、遠いせりふを傾聴しながらあるいは弁当とみかんの皮に埋りながら、後ろの戸の隙間から吹き込む冷たい風を受けながら、お茶子の足で膝を踏まれながら、前へ坐った丸髷と禿頭の空隙をねらいつつ鴈治郎の動きと福助のおかるを眺めることが、最も芝居を見て来たという感じを深くし、味を永く脳裡に保たしめるのであるらしい。そしてまた次の興行には必ず行ってまたあのうれしい苦労がして見たくなるのである。
それらの苦労をなめ、火鉢の温気と人いきれを十分に吸いつくして、頭のしんが多少痛み出すころから、漸く芝居の陶酔は始まるのだと芝居通の一人はいう。だがそれらの苦労を全部省略してしまった処の近代風の劇場では、見物人が煙草をのまぬが故に、ものを食べないが故に、火鉢を持ち込まない故に、芝居が終るころになっても空気はからりと冴えているので、どうもも一つ、張合がなくて、陶酔すべき原料がないという。
しかし大阪では、新らしい近頃の文楽座以外では先ず、どの劇場もまだまだ、充分の原料を設備して愛好家を待っている。