후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
川の音
川の音
七月中旬の午後、――ひどく暑い日で、風もなく、白く乾いた奥州街道を、西にかたむいた陽が、じりじりと照らしていた。
「そうだ、あいつだ」と伊東七十郎は歩きながらつぶやいた、「どこかで見た顔だと思ったが、たしかに彼に相違ない」
七十郎は、片方の手で額をぬぐった。手の甲に、べっとりと汗が付き、髪の生え際には、汗が乾いて塩になっていた。着ている生麻の帷子も、袴も、汚れてほこりまみれで、萱笠をあみだにかぶり、彼は刀を肩にかついでいた。刀には旅嚢がひっ掛けてあり、その旅嚢が背中へ触らないように、かついでいる刀をあんばいしながら、歩いていた。
そこは陸前のくに柴田郡の、岩入というところで、左に白石川の流れが見え、その流れはいま、街道とはなれつつあるが、広い河原をわたって、川の瀬音はまだはっきり聞えて来た。馬を曳いた農夫がゆきちがい、三頭の黒い牛を追って来た牛方とゆきちがった。三頭ともみごとな黒牛で、埃をあびているのに、その毛はびろうどのように艶つやと光り、そしてどの牛もずっしりと重おもしく、王者のように重おもしく、ゆっくりと歩き、通りすぎるときに、その一頭は、小さな眼で、七十郎を見た。