후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 167,285자 · 330화면
落魄して、旅にゆき昏れて、独り、乏しい酒を舐めている、といったふうな感じである。そんなふうに感じる自分の、すき好みな心ざまを、自分でもいくらか恥じながら、しかも甲斐には、それがひそやかに楽しく思われるようであった。
夜の八時ころであろう、酒をはこんで来た又之助に、もう寝てよいと甲斐が云った。すると少年は、宿の主人がお慰みに「盲人の芸者を呼んでもらえまいか」といっている、と告げた。
――二絃琴で語りものをうたう、旅の者ではあるが、暫く滞在しているし、客の評判もよいということであった。
甲斐が承知すると、やがて、宿の主人がその芸者を伴れて来た。黒い無地の布子に、古びた袴をはき、半ば灰色になった髪を、総髪に束ねていた。隼は五十から六十のあいだらしい。躯も顔も痩せていて、きみの悪いほど長い手指は、節くれ、皺だっていた。
吉岡一玄という者である、と披露して、宿の主人はさがった。一玄はかなり横柄な口ぶりで、「どういうものを好まれるか」と訊いた。甲斐は好きなものをやれと答えた。
甲斐の答えを聞くと、一玄はじっと耳をすまし、甲斐の声を吟味でもするように、賑やかなものがよいか、それとも静かなものがよいか、と訊いた。