후리가나로 읽는 일본 고전
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
吉川 英治의 大岡越前(おおおかえちぜん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 218,436자 · 437화면
と、阿能十はあわてて首を横に振り、「何でもありゃしねえがネ」
「もしや、何か、兄の体に?」
答えもせず、阿能十は、手を叩いた。茶めしやのおやじに、銭を払い、早くも笠をかぶり出している。
外へ出た。市十郎も、追いすがるようにそこを出て、忘れたような顔をしている相手の素振りへ、つよく迫った。
「約束だ、阿能。お袖の居所を教えてくれい。――約束ではないか」
「わかッてら、於市。あわてるなよ」
阿能は、そッ気ない大股になって、厩の渡しの方へ歩き、そこにうずくまっていた駕籠屋溜りへ手をあげた。
「二挺だよ。――番町まで」
駕籠賃を先に渡し、道順か何か、細々といっていた。そして、前のへ自分が乗り、後の駕籠を、市十郎に与えて、
「約束どおり、お袖に会わせざなるまいが、余り見せつけてくれるなよ」
と、からかって、駕籠の内へ、乗り分れた。
駕籠の内で、夜となった。――あしたは雪だろうと走りながら駕籠屋はいう。市十郎は、膝の冷えも覚えなかった。ゆうべ犯した罪の怖ろしさもわすれていた。さっき、兄の主殿の身にチラと危惧された不安も掻き消されていた。心はただお袖に会えることだけにあった。