후리가나로 읽는 일본 고전
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
小出 楢重의 小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 334,351자 · 657화면
春日の森にひぐらしとつくつくぼうしが私の汗をなお更誘惑する。男鹿はそろそろ昂奮して走るべく身がまえをする。そして漸く奈良の杉と雑木の濃緑の一色で塗りつめられたる単調の下に、銀色のすすきが日に日に高く高畑の社家町の跡を埋めて行く。
奈良で画家が集る写生地は主としてこの高畑である。私は時に高畑の東にある新薬師寺まで散歩した。その途中で数人の知友に出遇ったりもした。あるいは夕日の暑さに溶ろけた油絵具の糟が、道端の石垣に塗りつけられてあったりする。それを見ると暑い画家の怨霊がすすきの中から立ち昇ってくる気がしていけない。
新薬師寺の物さびたる境内は私の最も好きな場所であった。ひぐらしと蝉の鳴物はかえってあらゆる音を征服して非常な静かさを現す。その中に古い本堂が甚だ簡略に建っている。その本尊の顔は奇しくも暢びやかなうちに鋭い近代女性を示している。私はその本堂の隙間から覗いて暗い中から顔を撫る処の冷気を吸いながら、暫くこの世を忘れる事が出来るのだが、その本尊の顔を見るとこの世が少々忘れ兼ねるのである。眉が長く、目尻が長く、眼が素晴らしく大きく、瞳が眼瞼の上まではみ出している処は、近頃の女給といっては失礼だが、何か共通せる一点を私はいつも感じて眺めているのである。