후리가나로 읽는 일본 고전
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎 士郎의 尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 108,032자 · 216화면
ところどころに青黒いしみがうかびあがっている倉庫の古壁を見詰めていると、絶望的な過去の記憶が彼を鞭うつに違いないのだから、この男は、自分を擦り減らしてしまっているのだ。そして、今や最後の望みを毎週開かれる競馬にかけているのであった。それは彼の人生にとりのこされたたった一つのものに違いなかった。何故かといって多くの零落者たちにとって、彼等の人生に奇蹟を示すであろう唯一つの夢は競馬の外にはなかったから。彼はあらゆるものを売りとばしたり質に入れたりしてしまっていたが、不思議に唯一着の洋服を持っていた。競馬に出かける日の朝は、彼は必ずこの洋服を着て、颯爽として私の部屋に現れた。まるで人間が違ったように生々としてしゃべり、高い声で笑った。だが、夕方になると、私は悄然として階段を上ってくる彼の靴音を聴かねばならなかった。彼は黙って私の部屋の前を通り過ぎ、亡者のように、薄暗い自分の部屋に忍び入り音も立てずに眠ってしまった。この憂鬱な相場師とくらべると次の室にいる老人は非常に元気であった。彼は何時も莞々しながら誰とでも話をするにもかかわらず、誰も彼の素性を知る者はなかった。