후리가나로 읽는 일본 고전
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎 士郎의 尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 108,032자 · 216화면
しかし、あのひとはさすがにあきらめがついたというかんじで、
「一場の悪夢です」
と、低い声で申されました。それから、もう一度からからと笑って、
「まるでワナ(陥穽)に落ちた狸さ」
と申されました。「わたしは岸本の同志でもなければスパイでもありませんよ、唯、ワナです、だれをうらむということもない、とりみだしたわたしの姿を憐んで下さい、わたしは二十の年から何に対しても命だけは捨ててかかっているつもりです。そのわたしが死にきれないでいるという気もちを憐んで下さい」
わたくしは思わず合掌しました。一瞬間ではございますがわたくしの心は水をうったようにしずかになり、急にあのひとの眼がいきいきと冴えかえってくるように思われました。何か明るいかんじが胸の底までしみとおるようで急にあのひとと自分とが位置をとりちがえたような気がいたしたのでございます。それからさきはもうわけもなくかなしくわたくしは合掌したままで祈りつづけておりました。この気もちがおわかり下さいましょうか。世間では刑の執行がすむとすぐにわたくしが教誨師の職を辞してしまったことについていろいろな取沙汰をいたしておったということでございますが――さようでございますね、わたくしが痛憤のあまり職を去ったというようなことまでさかんに書きたてた新聞もあったようでございますが